COLUMN
コラム
わさびはそばのおいしさを引き立てる名脇役。健康効果やおすすめの食べ方を解説
この記事の監修者
有喜屋 三代目店主
三嶋吉晴
有喜屋(うきや)三代目店主。有喜屋は1929年 京都先斗町に創業した本格手打ちそばと蕎麦料理を提供するそば屋です。 最年少で京都府優秀技能者表彰「京都府の現代の名工」を受彰。 手打そば職人としては全国で初となる「卓越技能章」を厚生労働大臣より受彰。 天皇陛下から授与される褒章である、「黄綬褒章」を拝受。
そばの薬味として、まず思い浮かぶもののひとつがわさびです。
そばのやさしい甘みを引き立て、ツンと鼻に抜ける爽やかな辛みは、そばを味わううえで欠かせないと感じる人も少なくありません。
そこで今回は、そばとわさびの相性の良さとあわせて、その健康効果や、よりおいしく楽しむための食べ方のコツを紹介します。
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目次
1.そばとわさびは相性抜群
そばに添えられたわさびは、今や欠かすことのできない存在です。
では、そばとわさびの組み合わせは、いつ頃から親しまれるようになったのでしょうか。歴史とともに、相性の良さの理由を見ていきましょう。
(1)そばとわさびの歴史
わさびは、すでに飛鳥時代には薬草として利用されていたといわれています。一方で、そばの薬味として広く用いられるようになったのは、そばが庶民の食として大流行した江戸時代中期頃でした。
当時、そばつゆには鰹節が使われるようになり、その風味を引き立てると同時に、魚由来の臭みを抑える役割として、わさびが重宝されたとされています。
1751年に著された『蕎麦全書』には、 「山葵も宜敷物也。しかし、是は大根の辛辣なる物なき時、しぼり汁の替りにする事なり。」 という記述があります。
現代語にすれば、「わさびも良い薬味ではあるが、辛味の強い大根がない時の代用品として使う」という意味になります。当時はまだ、現在と同じ感覚ではなかったことがうかがえます。
しかし、時代を経るにつれ、わさび特有の爽やかな辛みと香りは、そばの風味を引き立てる名脇役として定着していき、今ではそばの魅力を語るうえで欠かせない存在となっています。
(出典: 日本わさび協会、静岡水わさびの伝統栽培 )
(2)相性が良いそばとわさび
わさびがそばとよく合う理由は、その爽やかな香りと辛みにあります。
わさびをそばにほんの少しつければ、ふわりと清々しい香りが立ちのぼり、そばの風味をきりっと引き締めてくれます。さらに、だしの旨味とわさびの刺激が重なり合うことで、味わいに奥行きが生まれます。
また、唐辛子のように舌に残る強さではなく、鼻に抜ける軽やかな刺激をもたらすわさびの辛みは、そば本来の香りや甘みを損なうことなく、むしろ引き立てる役割を果たしています。
さらに、食べ終えたあとに広がる清涼感も、そばとわさびの相性の良さを語るうえで欠かせません。後味をすっきりと整え、次のひと口へと自然に導いてくれます。
このように、わさびの存在は、そばの味わいを完成させる最後のひと押しといえるでしょう。
2.わさびの成分と健康効果
わさびは、そばの風味や旨味を引き立てるだけの存在ではありません。
薬味として添えられる小さな一片には、古くから注目されてきたさまざまな成分が含まれており、健康面でも多くの効果が期待されています。
(1)わさび特有の辛味成分と栄養素
普段は薬味として少量を口にすることが多いわさびには、さまざまな栄養成分が凝縮されています。
わさびのあのツンとした刺激の正体は、アリルイソチオシアネートという成分です。
わさびをすりおろすことで発生する辛味で、細胞が壊れることで酵素が働き、爽やかな辛みと香りが生まれます。
その他にも、わさびにはグルコシノレートやビタミンB群、ビタミンC、カリウム、カルシウムといったミネラルも含まれており、薬味として脇役に見えながらも実は栄養価の高い食材です。
しかし、そばの薬味として食べる量は少量のため、栄養補給を目的とするというよりは、香りや辛みを楽しむ食材として取り入れるのが自然です。
(2)わさびの健康効果
わさびの辛味成分であるアリルイソチオシアネートには、近年の研究によってさまざまな働きがあることが明らかになっています。
代表的なものとしては、以下の効果が期待できるといわれています。
- 生体内での解毒酵素の活性化
- 活性酸素にアプローチする抗酸化作用
- 血流やめぐりに関する健やかさの維持
(参考:静岡水わさびの伝統栽培 )
さらに、グルコシノレートには、健やかな体を維持する働きや、生体内での解毒酵素の活性化、各種リスクを遠ざける健康維持作用があるといわれています。
また、わさびには高い殺菌作用があることでも知られています。古くから刺身や寿司に添えられてきたのも、風味を引き立てるだけでなく、食品を衛生的に保つ役割があったためと考えられています。
さらに、抗酸化作用をもつビタミンCや、体内の余分な水分排出に関わるカリウムなども含まれており、日々の健康維持や美容面での働きにも注目されています。
わさびは、日本の伝統的な薬味であると同時に、さまざまな成分を含む機能性食材としても魅力のある存在です。
3.そばを食べる時のわさびの使い方
添えられたわさびをどう使うかによって、そばの香りやつゆの旨味の感じ方も変わってくるものです。
次に、そばをよりおいしく食べるためのわさびの使い方の工夫を紹介します。
- そばつゆに混ぜないのが「通」
- 適量をつける
- 温かいそばと冷たいそばで使い分ける
(1)そばつゆに混ぜないのが「通」
そば好きやそば職人の間では、わさびはそばつゆに溶かさず、直接そばにつけて食べるのが「通」とされています。
まず、そばに少量のわさびをのせ、そのままつゆに軽くくぐらせていただくことで、わさびの香りとそば本来の風味をより繊細に楽しむことができます。
なお、「わさびをつゆに溶かしてはいけない」という決まりはありません。もともと、わさびは鰹節などの魚由来の臭みを抑える目的で使われていた歴史があります。そのため、そばつゆにわさびを溶かして食べることも、決して間違いではないのです。
大切なのは、「通」とされる食べ方にこだわりすぎることではありません。食べ比べながら、自分好みの味わい方を探してみるのもそばの醍醐味のひとつでしょう。
(2)適量をつける
わさびは、つけすぎないことも大切です。
強い辛みを一度に加えてしまうと、そば本来の香りや甘みを感じにくくなってしまいます。まずは少量から試し、そばとのバランスを楽しむのがおすすめです。
また、わさびを大量に摂取すると、胃腸への刺激が強くなり、腹痛や下痢を引き起こす場合もあります。
爽やかな辛みを心地よく味わうためにも、少しずつつけることを意識すると、より上品にそばを楽しめます。
(3)温かいそばと冷たいそばで使い分ける
実は、温かいそばと冷たいそばでは、わさびの楽しみ方も少し異なるといわれています。
冷たいそばは、わさびの香りや辛みを感じやすいため、そばに直接少量つけて食べることで、清々しい風味をしっかり味わえます。ざるそばやせいろそばとの相性は特に抜群です。
一方、温かいそばでは、熱によってわさびの辛みや香りがやや穏やかになります。そのため、つゆに少し溶かして味の変化を楽しむ食べ方も親しまれています。
同じわさびでも、そばの温度によって印象は大きく変わります。ぜひ、その違いも楽しみながら味わってみてはいかがでしょうか。
4.さらにおいしくいただくコツ
最後に、わさびでそばをよりおいしく味わうためのコツを2つ紹介します。
- 本わさびを食べる直前にすりおろす
- チューブわさび・粉わさびの保存方法
(1)本わさびを食べる直前にすりおろす
わさびは種類によって風味が大きく異なります。そばとの相性をより深く楽しみたいのであれば、本わさびを選ぶのがおすすめです。
本わさびの特徴は、鼻に抜けるような爽やかさと上品でやわらかな香りにあります。辛味も比較的まろやかで、後味がすっきりとしているのも魅力です。
一方で、チューブわさびや粉わさびには、西洋わさび(ホースラディッシュ)をベースに、からしや香料、着色料などが加えられていることも多く、風味は本わさびとはやや異なります。手軽さという点では非常に便利ですが、そば本来の繊細な香りと調和させるという意味では、本わさびのほうがより相性が良いといえるでしょう。
また、本わさびはおろしたてが最も香り高いとされています。時間が経つにつれて香り成分が揮発してしまうため、できるだけ食べる直前にすりおろすのが理想的です。なお、細かくなめらかにおろせる鮫皮おろしを使うと、より風味を引き出すことができます。
(2)チューブわさび・粉わさびの保存方法
本わさびがない場合は、もちろんチューブわさびや粉わさびを使っても問題ありません。
ただし、これらのわさびは開封後、空気に触れることで風味が徐々に落ちていきます。そのため、鮮度を意識して、使用後はしっかりとキャップや蓋を閉め、乾燥を防ぎながら冷蔵庫で保存することが大切です。また、できるだけ早めに使い切りましょう。
香り高いそばを楽しむなら、ぜひ有喜屋にお越しください
そばのおいしさは、麺やつゆだけでなく薬味とのバランスによっても印象が変わります。わさびの爽やかな香りを少し添えるだけで、そばの甘みやだしの旨味がより引き立つこともあります。
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ぜひ、有喜屋ならではの季節の味わいを通してそばの奥深さをご堪能ください。

