COLUMN
コラム
【京都そば職人が解説】関西と関東の出汁の違いと美味しいそば湯の飲み方
この記事の監修者
有喜屋 三代目店主
三嶋吉晴
有喜屋(うきや)三代目店主。有喜屋は1929年 京都先斗町に創業した本格手打ちそばと蕎麦料理を提供するそば屋です。 最年少で京都府優秀技能者表彰「京都府の現代の名工」を受彰。 手打そば職人としては全国で初となる「卓越技能章」を厚生労働大臣より受彰。 天皇陛下から授与される褒章である、「黄綬褒章」を拝受。
この記事ではそばにまつわるよくあるご質問にお答えしております。
また、そばを美味しく食べるポイントやお店選びのコツも最後に紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
関東と関西でうどんとそばの出汁はどのように違う?
- 水が違う
- 削り節が違う
- 味付けの醤油が違う
関東の出汁は見た目の色が濃く、味が辛い「つける出し」と言われる一方で、関西の出汁は見た目の色が薄いのにもかかわらず、出汁本来の味を効かせた「飲む出汁」と言われています。
なぜ、関東と関西でここまで味の違いが出たのかというと、1番の理由は水が違うからです。
関東では「硬水」を使っているため、鰹節や昆布のだしといった出汁が出ないと言われています。
また、削り節も荒削りの分厚い鰹節を長時間炊き込んで煮詰めて濃い鰹節のエキスを作り、出汁を引いています。
ざる蕎麦の場合では、そこへさらに溜まり醤油のようなかえしを加えるため、見た目の色も味も濃い出汁となっています。
一方、関西では「軟水」を使っているため、最初の工程の段階で鰹節や昆布だしの味をしっかり引き出すことができています。
また、味付けに薄口醤油を使用しているため、関東とは違って見た目の色が薄いです。
薄口醤油は塩分濃度が16%前後と濃口醤油と比べて高いため、色は薄くても味付けがしっかりした出汁を作ることができます。
黒っぽいそばと白っぽいそばの違いはなに?
- 抜き実を石臼で引いていく工程に色の違いが出る
まず、白と黒のそばができる理由として、同じ1粒のそばの実から石臼で引いていく工程にあります。
そもそも、そばは実から殻を取った「抜き実」を石臼で引いていきますが、白っぽいそばは石臼で最初に引いた際に抜き実が割れた瞬間に出てくる白い粉で作られています。
この白い粉を「一番粉」と言い、取れる数が限られていて希少価値の高い粉となります
そこからさらに石臼で抜き実を引いていくと、だんだんと黒い粉が出てきます。
黒っぽいそばはこの黒い粉で作られており、「二番粉」「三番粉」と言われております。
また、味の違いに関しては、白っぽいそばはデンプンを中心にしているため、癖がなく甘みがあるのですが、そば特有の味はほとんどしません。
一方で黒っぽいそばは味や風味がしっかり出ており、二番粉、三番粉と打ち実の外側にいくに連れて味や粘り気が強くなります。
このように、お店で出されるそばの色の違いに理由があるのは、一番粉、二番粉、三番粉の配合のバランスがそれぞれ違うといったことになります。
そばを食べた後に出されるそば湯は飲んだ方がいい?
- そば湯は栄養成分が豊富なので飲んだ方が良い
- そばちょこ、そば徳利、薬味皿が提供されているお店を選ぶと良い
結論としては、そば湯は飲んだ方が良いです。
なぜなら、そばを茹でる際に抜けていった栄養素をそば湯として飲むことで吸収することができるからです。
そば粉の栄養素は水溶性になるため、お湯で湯掻く段階で栄養が抜けていき、食べる段階ではそばの栄養素が7割〜8割程度しか摂れなくなってしまいます。
食後にそば湯を飲むことによって、抜け出たそばの栄養成分を吸収することができます。
また、そば湯を美味しく飲むことができるお店選びとして、そばちょことそば徳利、薬味皿の3つを提供しているお店を選ぶと良いでしょう。
理由は、そば湯とつゆの量を調整することができるからです。
空のそばちょこにそば徳利に入っているつゆを自分の量で調整して入れることができるため、これらが用意されていないお店に比べて、食べている最中につゆや薬味の量を加減していただくことができます。
食後のそば湯も濃過ぎない味付けに仕上げることができ、そば湯本来の味を楽しむことができます。
まとめ
今回は、関東と関西でうどんとそばの出汁の違いや黒っぽいそばと白っぽいそばの違い、そばを食べた後にそば湯は飲んだ方が良いのかについて解説しました。
そばにまつわる歴史から知っておくことで、いつも以上に美味しくそばを味わうことができるでしょう。