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節分そばとは?その理由や由来・おすすめの食べ方などを紹介

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有喜屋 三代目店主

三嶋吉晴

有喜屋(うきや)三代目店主。有喜屋は1929年 京都先斗町に創業した本格手打ちそばと蕎麦料理を提供するそば屋です。 最年少で京都府優秀技能者表彰「京都府の現代の名工」を受彰。 手打そば職人としては全国で初となる「卓越技能章」を厚生労働大臣より受彰。 天皇陛下から授与される褒章である、「黄綬褒章」を拝受。

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「節分そばってどんなものなの?」
「節分そばはなぜ今は行われていないの?」

節分と言えば、恵方巻や豆まきの習慣を真っ先に思い浮かべる方も多いはずです。しかし、江戸時代には、節分にそばをいただく「節分そば」という食習慣があったことをご存知でしょうか。

当時、節分そばは人々の新たな1年への願いが込められた大切な食習慣として、定着していました。しかし、明治時代に旧暦から新暦に変わったことで徐々に行われなくなっていき、現在では限られた地域のみ引き継がれています。

この記事では、節分そばの意味や由来などの解説と合わせて、節分そばの正しい食べ方やルール、より楽しむ方法を解説します。

1. 節分そばは昔の年越しそば|節分にそばを食べる理由

節分そばとはその名の通り、節分に食べるそばのことです。現代ではあまり馴染みのない食習慣ですが、節分そばの始まりはそばが庶民に一気に広まった江戸時代後期にまでさかのぼり、当時は全国的に広く行われていたといわれています。

なぜ節分にそばを食べていたのか、それは旧暦(天保暦)が大きく関係しています。次に詳しくみていきましょう。

(1)節分そばの由来

節分そばとは、旧暦の新年にあたる立春の前日の節分の日に「よい年になりますように」などの願いを込めてそばを食べる食習慣のことです。

旧暦において、節分とは立春・立夏・立秋・立冬の前日のことを指します。節分は1年に4回あることになりますが、江戸時代からは4つの中でも特にめでたいとされた立春の前の日を節分と呼んでいました。

旧暦では、厳しい冬を終えて春を迎える節目である立春を一年のはじまりと考えていました。つまり、立春は現在のお正月、その立春の前の日の節分は大晦日(おおみそか)にあたることになります。

現代の年越しそばと同じく、新しい1年が始まる前日の節分の日にそばを食べることで、翌年の無病息災・健康長寿などを願う習慣が江戸時代に広まったことが節分そばの始まりであり、これが現在の年越しそばのルーツでもあります。

年越しそばについては詳しく知りたい方は、次の記事もご覧ください。
年越しそばの意味は?いつ食べるのが正しい?由来や歴史、注意点を解説

(2)節分そばに込められた願い

節分そばは、以下のように新しい一年を迎える前にこの一年の悪い縁や厄を断ち切り、新しい年を健康で仲良く幸福に暮らせるようにとの願いを込めて食べられていました。

  • そばのように細く長く生きられるようにという『長寿の願い』
  • 家族との縁が長く続くようにという『家族円満の願い』
  • そばは切れやすいことから前の年の悪縁や災厄を断ち切る『厄落とし』
  • 金細工師が散らかった金粉を集める際にそば粉を使っていたことから金を集める縁起物『金運アップ』
  • そばの実が五臓の毒を取り除くことから『毒落とし』

上記の他にも、そばは痩せた土地でも丈夫に逞しく育つことから、逆境や困難にあっても強く生きられるようにとの願いも込められていたと言われています。

2. 現在節分そばの風習が続いている地域

節分そばは江戸時代に生まれた食習慣ですが、明治時代に旧暦から新暦に変わったことに伴い、1年の始まりが現在の1月1日になり、大晦日が前年の12月31日となったことで徐々にすたれていったようです。

現在も節分そばを食べる習慣が残っているのは、そば処で有名な信州や出雲地方のみとなっているようです。この地域では、節分の時期になると節分そばとしてそばを提供するおそば屋さんや、恵方巻や豆と一緒に節分そばを店頭に並べるスーパーも多いそうです。

3. 節分そばの正しい食べ方とおすすめの食べ方

節分そばを食べる時には、恵方巻のように恵方を向いて黙ったまま1本をそのまま食べるといった特別な食べ方のルール・作法は特にありません。また、食べるべき時間や入れるべき具材などもありません。

しかし、せっかく春の訪れを喜び、験を担いで節分そばを食べるなら特別感もプラスして食べたいものです。節分そばをさらにおいしく楽しく食べる方法をご紹介します。

(1)縁起のよい具材・薬味をトッピング

節分そばを食べる時は、さらに験を担いで縁起がよいと言われる次の食材をトッピングしてみてはいかがでしょうか。

  • えび天(長寿)
  • 紅白かまぼこ(紅:魔除け、白:清浄)
  • いわし(鬼払い)
  • ネギ(魔除け・長寿)
  • ゆず(邪気払い)
  • にんじん(「ん」が付くことから運気アップ)
  • とろろ(滋養強壮・長寿)

そばだけでは栄養が偏るため、上記の縁起の良い食材の他に、栄養が豊富な2月の旬の食材をプラスするのもおすすめです。

旬の鰆やホタテ、フキやウドや菜の花など春野菜の天ぷらなどのトッピングは、そばやそばつゆとの相性も抜群です。特に春野菜の苦味が味を引き立ててくれることでしょう。また、旬の大根をすりおろして薬味としてたっぷり使うのもおすすめです。

(2)他の節分の行事食と一緒に食べる

節分そばと一緒に節分の日に食べる行事食を食べるのもさらに特別感が出るのでおすすめです。節分と言えば、やはり恵方巻ですが、その他にも節分に食べるとよいとされている食べ物は意外とたくさんあります。

  • 恵方巻
  • けんちん汁
  • 麦飯
  • ぜんざい
  • 福茶

古くから伝わる精進料理のけんちん汁は野菜もたっぷり入っているので栄養バランスも整うのでおすすめです。また、世の中がよく回るようにという願いを込めて頂く麦飯も縁起がよいとされています。節分そばを食べた後には、食後のデザートとして、厄除けの効果があるといわれる小豆を使ったぜんざいをいただきましょう。豆まきに使った豆3粒と梅干しと塩昆布を入れた福茶も合わせてどうぞ。

節分そばと一緒に他の節分の行事食も食べることで、この1年を振り返りつつ、新しい1年の訪れを祝う気分もさらに盛り上がることでしょう。

(3)「そば前」もおすすめ

春の訪れを告げる立春はめでたい日です。その前日の節分には、美味しいそばと一緒に、とっておきの日本酒や焼酎、ワインなどのお酒をいただく「そば前」を楽しむのおすすめです。

「そば前」について詳しく知りたい方は、次の記事もぜひご覧ください。
そばと酒は相性抜群!そば前の歴史やそば屋飲みの作法・お酒の楽しみ方

節分そばで新たな春を迎える準備をしましょう

この記事では、節分そばについて解説しました。旧暦から新暦となったことで徐々に行う地域が減った節分そばの食習慣ですが、新しい春を気持ちよく迎えるために人々の願いが込められた素敵な食文化であるのは間違いありません。

現在、その食習慣は年越しそばに引き継がれ、節分そばの習慣が残っているのも限られた地域のみとなっています。しかし、節分そばは待ちに待った春の訪れを喜び祝うための素晴らしい食習慣です。今年から恵方巻や豆まきといっしょに取り入れてみてはいかがでしょうか。

2025年の節分は2月2日です。有喜屋でも最上級のそばをご用意してお待ちしております。また、オンラインショップでは、ご家庭でもお気軽に本場の味を楽しめる各種そばも販売しております。春の訪れを喜びつつ、1年の幸せを願いながら有喜屋のそばを食べて、福を取りこみましょう。